テキスト
峡谷を吹き抜ける風は、今もなお銅鐸を撫で、その音は幾重もの波紋となって、この地に過ぎし日の記憶を響かせる。
ときには、澄んだ声で『墨経』を朗読する子供たちの声がこだまし、ときには、迷いを抱えた老人が問答を重ねる声が続く。
ときに争いが生まれ、別れの涙が流れることもある。
けれど、一滴の水がまた一滴と重なり流れゆくように、ここで紡がれる出来事は代々語り継がれ、やがて永く続く物語となる。
風が鐸を鳴らし、露が岩を打ち、かすかな音を立てる。
鈴の音は昔も今も変わらず、この場所の「変わらぬ日常」が、途切れることなく続いている。