テキスト

たぬこの名は、墨門じゅうに鳴り響いている。人を恐れず、人にも怯えず、年がら年中、大殿の梁の上に伏して、長老が昼夜絶え間なく施す教えに耳を傾けている。年月を重ねるうちに、本当に「賢い猫」になってしまったかのようである。子猫が梁まで跳び上がれず困っているときは、自分の尻尾をそっと垂らして梯子代わりにし、罠にかかった迷い雀がいれば、器用に爪を使って絡まりを解き、空へと帰してやる。その様子を見た長老は手を打って称えた。「たぬきですら『兼相愛・交相利』の理をわきまえている。人間はどうして、いまだに分からぬのだろうな」