テキスト

異香火燭・夜凧 火燭の香気はいつも彼女に多くの往事を思い起こさせる。 墨門に入門した頃、彼女も同門の弟子たちと同じようにからくりの製作を学んだ。 夜の闇に揺れるわずかな燭火が、苦労して組み上げた異形の木凧を一層奇妙な姿に映し出していた。 左の翼は枯れ木のように太く、右の翼は煎餅のように平たい。 一方、師匠が作る小物はどれも軽くて使いやすく、趣に溢れていた。 九折釣り竿、乾坤袋、それに封龍の弟子に作った火打ち石の印章…… 彼女も好きではあったが、毎回頭では完璧に理解したつもりでも、作り上げてみれば虎を描いて猫になるありさまだった。 幸い、からくりと武術には共通する部分もあり、師匠の教えは武の道においても大いに役立った。