テキスト

古の言葉に曰く、獣は極真にして極愚、極情にして極性、人となるべし。だがこれは人の妄言、獣への勝手な願望に過ぎぬ。 白狼主は人となることを望まず。狼と共に育った彼女は、既に人の言葉を忘れかけていた。 主となることも望まず。狼たちは彼女にとって、共に生きる仲間、家族そのもの。獣は何も従えようとは思わぬが、常に獣を従えようとする者がいる。 ......鷹愁の嶺の夜、狼の遠吠えが響く。腰の獣骨に触れながら月を仰ぎ、刀を握り締めたまま動かぬ人影。