テキスト
馬漫香は、朱頭領の赤い袖を決して忘れない。契丹人の刃は、雷のように鋭くそして速かった。だがその瞬間、朱頭領の袖がひるがえり、閃く刃を軽やかに弾いた。轟く雷雨の中、馬漫香を死の間際から天上来へ引き戻した。だが、どうやって恩返しすればいいのだろう?馬漫香は、ただの平凡な娘。特別な才能も、ずば抜けた賢さも持っていない…けれど、朱頭領が自分を救ったその瞬間、彼女のお腹が、ほんのり鳴ったことを聞いたのだ。英雄だって、お腹が空くんだ。だったら私は、恩人のお腹を満たそう。そう思いながら、馬漫香のまな板には、もう一つ、何の変哲もないけれど、心を込めて包んだ餛飩が並んでいた