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梨秦秦の世界は、ずっと真っ暗だった。 目が見えないというだけで、人としての自由を奪われた。 突き飛ばされ、罵られ、忌み嫌われ...そして小さな袋に入った銅銭で彼女の人生は売られた。 反抗するなど、考えたこともなかった。反抗という発想すらなかったのだ。世の誰もが自分と同じように、出口のない運命の海でゆっくり溺れていくのだと思っていた。 だから奴隷として売られても、病み狂った男に嫁がされても、何も言わなかった。婚儀の夜、刃を向けられても、ただ細い首を差し出しただけだった。 …その刃が、一振りの剣に弾き飛ばされるまでは。 少年が小さな短剣を彼女の手に握らせたとき、彼女は初めて別の選択肢があることを知った。 かつて彼女を辱めた者たちが、今度は震えながら跪き、昔の自分と同じように震えながら命乞いをしていた。 後に「月神」と呼ばれるようになった彼女が、なぜ剣の道を選んだのかと問われた。彼女は答えず、ただそっと剣を撫でるだけだった。 その剣こそ、残酷なこの世を渡る彼女唯一の支えだったから。