テキスト
お父上へ
拝啓、その後のご様子はいかがでしょうか。娘が突然家出いたしましてから久しく、そのたびに罪悪感に苛まれ、こうして筆を取らせていただきました。
昔は些細なことで口論になり、娘は意地になって家を飛び出し、それからずっと音沙汰なくしておりました。お父様、そしてお母様のお身体が心配で、胸が痛みます。
幾年もの放浪を経て、ある夜月を見上げていると、ふっと心が軽くなりました。千里先でも月は同じです。過去のわだかまりは、もう風と共に去りました。
ぜひお父様と再会し、酒を酌み交わし、本音を語り合い、美しい月を眺めながら家族団欒の時を過ごしたいものです。お父様、いかがでしょうか。
取り急ぎ、謝罪と近況のご報告まで。
敬具 娘 拝上