テキスト
墨城の北のふもとに一つの谷がある。地下には銅や鉄が豊富に眠り、百年にわたる採掘で無数の坑道が穿たれ、陽の光も届かないことから晦谷と呼ばれる。
古いしきたりでは、墨山の弟子は入門後まず三年をこの晦谷で過ごし、金石の性を学び、冶錬の技を身につけてこそ仕掛けの道に入れるという。
鴉や青の二人の巨子、そして名匠の張万師もかつてここで学んだと伝えられ、その跡はいまも残っている。
遠くから眺めれば、谷には黒煙が立ちこめ、赤い光が揺らめき、まるで天地を煮る巨大な釜のようだ。
「石を煮て金を成す」とはよく言うが、たとえ手間を省いても、学びの道が容易でないことに変わりはない。