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「南華公子」とは、十数年前に突如江湖に名を馳せた伝説の人物である。 広順三年、金陵での国宴にて、契丹の使者が宴席で乱を起こし、芸を披露していた「酔花陰」の美女をさらって北へと連れ去った。だが、その道中、前朝の若き志士が偶然通りかかり、怒の刃を振るって契丹の賊を斬り捨て、美しき「花」を救い出したという。 その後、南華は二人と宿場で出会い、その義侠の行いに心を動かされ、一篇の詞を贈った。その詞はあまりに巧みで、まもなく「前朝の志士、契丹使を斬る」の物語は美女の歌とともに南北を駆け巡り、民の口の端にのぼった。 しかし、それから間もなく、契丹はこの事件を口実に大々的に周を攻める。「英雄」は戦場にて命を落とし、南華と美女も忽然と姿を消した。この事件の真相をめぐっては多くの憶測が飛び交った。三人の背後には武林と朝廷を揺るがす陰謀があったとも、あるいは最初から仕組まれた芝居だったとも言われる。 結末の見えぬまま、ただ南華の残した詩の美しさだけが、今もなお、江南の水煙のように、淡く、遠く、九州を漂い続けている。