テキスト

良い知らせは、沈玉が物語を聞くのが好きだと分かったこと。 悪い知らせは、彼女が好きなのは物語だけだということだった。 遊楽街で買った品は沈玉にことごとく拒まれ、蕭史はより多くの物語を語るしかなかった。物語を聞く時の彼女の笑顔は、初めて会った時とは全く違っていた。その笑顔に心を奪われ、蕭史は世の物語を全て聞かせたくなった。 夜更けまで考え続けた。蕭家から逃げ出した夜、自分はまるで籠から飛び出した鳥のようだった。ただ、運命は皮肉なもので、あの夜たまたま誰かが餌をくれたおかげで、少しだけ羽を休めることになった。人に飯の恩があれば返すものだが、これは何と言うべきか、餌の恩か? どんな恩であれ、彼女をもっと笑わせたいと心から思った。彼女の過去は笑顔のない日々だったが、今は違う。何が違うのか?と自問するが、答えは見つからなかった。ただ一つ確かなのは、彼女が笑えば、蕭史自身も心から嬉しくなったということ。だからこそ、何日も何夜も沈家の周りをうろつき続けたのだ。 「江湖へ行かないの?」 「まだ行かない」 しかし沈玉の喜びは、夜のほんの束の間にしか見られない。蕭史の行き来を時折眺めながらも、どこか遠くを見つめている。 彼は必死に、彼女の悲しみの理由を理解しようとした。沈家の侍女たちの噂話に耳を傾け、この息苦しい屋敷を観察し始めた。 見上げる屋敷はあまりにも静かで、鳥のさえずりさえほとんど聞こえない。この重苦しく生気のない場所は、生き生きとした沈玉には似つかわしくない。もし自分がここに住んでいたら、屋根をぶち破ってでも、この鳥の声すら稀な場所に活気をもたらしただろう。 「籠の『竹』を取り払えば、龍になる」 蕭史はこの言葉を思いつき、得意げになった――そうすれば、龍は大海へ、雀は大空へと羽ばたける。そうなれば、きっと沈玉ももっと笑ってくれるはずだ。 「ねえ、もう行くの?」 「もうちょっとここにいる」 「じゃあ、物語は?」 物語は確かに大切だ。だが今は、全ての物語をたった一人に聞かせたい。