テキスト

最も穢れた者はすべてを学び、最も輝く者は故郷を捨てて遠ざかった。 その後、無数の夜、蝦蟇長老は夢にうなされ目を覚まし、愛し憎んだ墨山道への複雑な思いに苛まれた。 彦希は自らの才能を呪った。道心なき器など、ただの抜け殻に過ぎないと。 幼少時に戦火で心を焼かれた彼の内側には、深い憎悪だけが渦巻いていた。高みで笑う権力者が千万の命を軽んじる姿、戦争の代償を払わぬ者たち。それこそが世の病巣だと彼は信じた。 しかし、復讐に燃える心は墨山道の光と相容れなかった。兄弟子姉たちの輝きは彼を温めると同時に焼き尽くした。 彦希は偽りの仮面を被り、沈黙して星々の傍らに立とうとしたが、手元の仕掛け術は嘘をつかない。 皆が木凧を舞わせる中、彼の生み出すのは毒を帯びた醜い仕掛け虫ばかりだった。敵を静かに葬るためだけの技術なんだ。浮遊屋敷への幽閉も、仕掛け秘伝の禁止も、彼は受け入れた。自分は彼らのようにはなれないと知っていたからだ。 だが突然、すべての光が消えた。心の奥底に秘めたあの人を引き留めることも叶わなかった。 師に許され浮遊屋敷を出た時、老いた師の前に立つ彦希は、山門から完全に閉ざされた存在となっていた。 残された三年、師は全ての時間を捧げて秘技を伝授し、彦希はついに夢見た仕掛け術を極めた。 最期、師は仕掛け術の話ではなく、ただ彦希の手を握り 「辛かったな...辛かったな...」と繰り返し囁いたという。 その後、彦希は四番姉弟子の作った蛙の面具を被り閣主となった。白髪交じりの頭を見て、新弟子たちは過去を知らず彼を蝦蟇長老と呼ぶ。 あの年以来、彼を末の弟弟子と呼ぶ者はもういない。