テキスト

ほしかきがまだほんの小さかったころ、転がる干し柿を一生懸命押している小さな生き物と、何度か出くわしたことがある。 心の中では、いつの間にか小さな賭けを始めていた。今度干し柿を押しているのはなんだろう? 小さなネズミかな、小鳥かな、それともまったく別の何かかな? ぷにぷにとした肉球には、緊張からか静かに汗がにじむ。ほしかきはそっと背の高い草むらをかき分け、その先をのぞき込んだ。 賭けは見事に的中。やっぱり、あの小さなネズミだ! ほしかきは「ニャー!」と声を上げて跳び出し、小ネズミめがけて駆け寄る。小ネズミも「さえずり!」と悲鳴を上げて飛び上がり、あわてふためいて手にしていた干し柿をぽろりと落とし、前方へ転がるように逃げ出した。 猫とネズミは、一緒になって全力疾走。夢中になって、命がけで原っぱを駆け回る! 草むらには風が走ったような軌跡が描かれ、猫のしっぽは楽しさを隠せず高々と掲げられている。 捕まえられたら今夜は肉。逃げられてしまったら、今夜は干し柿だ!