テキスト

「とんとん」は墨城で一番の食いしん坊の子猫だ。そこをいくと、「とんとん」とは「豚豚」のことなのかもしれない。食べ物のためなら天にも昇り、水の中にだって潜っていく。ご馳走さえもらえれば、その場でごろりとひっくり返ってお腹を見せることさえ厭わない。そんな猫らしくない振る舞いが、ほかの猫たちからはしばしば軽蔑のまなざしを向けられている。ある日、蘇大匠が香り高い特製の墨を手に入れ、腕によりをかけて見事な文章を書こうとしていた。ところがとんとんは、その匂いを嗅いだ途端、また新しい美味しいものだと思い込んでしまい、その墨にぱくりとかぶりついたのだ。見ると、食いしん坊の口元は真っ黒け、唇はもぐもぐ動いているが、その顔はどうにも微妙で、とても美味しいとは思えなかったらしい。蘇大匠は苦笑いを浮かべ、とんとんに向かってこう嘆いた。「食いしん坊め、お前のお腹の中で、わしの立派な文章がぐちゃぐちゃに噛み砕かれてしまったじゃないか!」