テキスト
体が細くて小さいせいで、むくちと遊びたがる犬はほとんどいなかった。だからむくちは、いつも地面にぺたりと伏せたまま、ただ黙っているだけで、一度も声を上げたことがなかった。
あの、やかましいダメ声犬のガラと出会うまでは。
初日、ガラは朝から晩までむくちに向かってワンワン吠え続け、その日はそのまま帰っていった。
二日目も同じように、一日中吠え立てては、満足そうに尻尾を振って帰っていった。
...
そうして三日間、途切れることなく吠え続けたあと、むくちは、ついに生まれて初めて言葉を発した。
見た目だけなら、どう見ても「むくち」にしか見えない。実際、声を出すことはほとんどない。けれど、ガラが毎日ワンワン騒いでいるあいだ、むくちは誰にも気づかれないように、こっそり何度も尻尾だけは振っていたのだ。