テキスト

古びた錦箱の中には、潤んだ白さで透き通る和田玉の杯が大切に収められている。 杯の身にはひびが一筋走っているが、その輝きはいささかも曇っておらず、玉を刻んだ者が心血を注いで作り上げた至宝であることが見て取れる。この杯は波陳の邸にぞんざいに捨て置かれていたところを、ひとりの侠客が拾い戻した。献杯の宴で掲げられた夜光の玉杯ほどまばゆくはないが、一片の血の穢れもまとっておらず、ただ純粋に、ひとりの職人が抱いた最初の志だけが宿っている。