テキスト
【孤雲】
今日はわざわざ身なりをきちんと整えて街に出たというのに、出くわしたのは妙な坊主だった。いきなり「お前は九流門の者だな」と言い出し、隠しきれていない場所が少なくとも六か所あるだの、お前の詐欺の手口も十通り以上知っているだのと、ぺらぺらしゃべり立てる。腹が立って仕方がない。これはもう、俺の飯の種を潰しに来たとしか思えない!思わず縄鏢を抜いて、そのままぶん殴ってしまった。
やつが地面にぶっ倒れたのを見届けると、すぐさま財布をあさったが、中身は見事に空っぽだった!
「あんたは知識人だろうが、なんで一文無しなんだ?」と問い詰めると、
やつは顔を真っ赤にして、「学問とはそういうものだ」「一つの星に八つの名がある」などと、延々と説教を始めた。いったい何の役に立つんだか!
とはいえ、無断でぶん殴ったこちらも悪い。やつを起こしてみれば、お詫び代わりとばかりに、半日以上も愚痴を聞かされる羽目になった。仕事がないとこぼしていたので、俺はひらめいた。「お前は口が達者なんだから、二人で占いの屋台でも出そうぜ。お前がもっともらしいことをでっち上げて客をだます役、俺が客寄せ役。利益は五分五分でどうだ!」
すると、その道士は逆にムキになって反論してきた。「私の星占いは、天下の大勢を推し量るためのものだ。運勢占いごとき三流の使い道には決して落とさない」と。
「じゃあ、できないんだな」と返すと、
やつは首をぐっと伸ばして、「できる!やらないだけだ!」と叫んだ。
「そりゃあ、金持ちになれるはずがないさ」
別れ際、やつが本当に一文も持っていないのを見て、さすがに少しばかり哀れに思い、銅銭をいくつか分けてやり、せめて一食分の足しにはなるようにした。
ちくしょう、今日もまた、自分から金を出す羽目になっちまったじゃないか!
【天泉】
門内では、天泉は富の神様のような存在だとされている。だが、いくらなんでも直接「恵んでください」と頭を下げるのは、あまりにみっともない。俺にはできない。ところが今日、たまたま天泉の連中の後をこっそりつけて歩いていたら、ちゃんと金を稼げそうな妙案を思いついた。
やつらは毎日、春水閣で湯浴みをする。体つきも見事なものだ。もし窓の隙間からこっそり覗いて、その裸姿をスケッチし、一枚十銭で売り出したら、これは間違いなく需要がある!
ああ、せっかくの良い案だったのに、二枚描いただけで捕まってしまった。
一団の頭に問い詰められたが、その腕力たるや相当なもの。ビクッと震えた拍子に、洗いざらい白状してしまった。ところが驚いたことに、話を聞き終えた兄貴分はこう言ったのだ。「絵を描くなら、もっと早く言えよな! 脱いでやるから、好きに描け!」
さすがは天泉の弟子、なんと心の広いことか!兄貴は何度もポーズを変えながらモデルになってくれ、俺は一気に十枚も描き上げた。町で売り出してみたところ、たちまち完売。久々の大儲けだ!
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今日、富の神様がまた俺を呼び出し、「目の前にいない人、見たこともないが、誰かの話にだけ聞いたことのある人物を描けるか?」と尋ねてきた。
「描ける」と答えると、彼は袋いっぱいの金を放り投げてよこし、何人かの人物の肖像を描いてくれと頼んできた。
だが、本人の記憶はどうにもあいまいで、「口元のあたりにほくろがあったかもしれない」などと、役に立たない手がかりばかり。それでも、あれだけの金を受け取ってしまった以上、文句を言う筋合いはない。言われた特徴をつなぎ合わせながら、できるかぎり心血を注いで描き上げた。
彼の表情がどこか沈んで見えたので、てっきり仇敵の似顔絵でも作り、通緝令にでも使うつもりなのかと思った。ところが彼は、絵を受け取ると、その足で裏庭に向かい、一枚残らず焚き火にくべてしまったのだ。
これほどの金をかけて描かせた絵を、なぜ燃やしてしまう?そう思って見つめていると、彼は絵が炎に包まれていくのを眺めながら、ぽろぽろと涙をこぼした。男が俺の目の前で泣くのを見るのは、生まれて初めてだった。胸が妙に締めつけられ、わけも分からぬまま、俺までつい目頭が熱くなってしまった。
【無心谷】
無心谷の者には、これまで一度も会っていない。いや、会ったとしても、近づく勇気がない。薬でこっそり殺されでもしたらたまらないからだ。正直、怖い。
【九流門】
姉弟子の阿心が、この日記を読んで、こう言った。「お前みたいに良心のあるやつは、人から金をだまし取るなんて向いてない。そんなこと、もう考えるのはやめなさい」そして続けて、「もっと効率のいい方法があるから、いずれ教えてあげる」とも。
師姐がこれを褒めてくれたのか、それとも皮肉っているのかは分からない。けれど、その言葉を聞いて、なぜか少し嬉しかった。
どうせ腹は決めた。どうしても食っていけなくなったら、文津館の本好き連中のところへ行って、墨をする仕事でももらえばいい。この広い世の中だ、それくらいで飢え死にすることはあるまい。