テキスト

「活人医館」は今日も開店休業。天不収はのんびりと長椅子に寝転がり、今月の儲けを頭の中で計算していた。ふと顔に載せていた帳面を誰かに引き剥がされる。腹を立てて跳ね起きようとしたが、目の前に立っていたのは寒香尋だった。天不収は仕方なく寝転がって背を向け、「お休みだよ。今日は寝るんだから」とぶつぶつ言った。 「早く起きな。『値千金』を一本作っとくれ」と寒香尋が切り出した。儲け話を断る道理などない。天不収は飛び起きて目の前の金づるに感謝しようとしたが、よく考えると腑に落ちない。仙の港で何かあったとも聞かない。あのけちな寒香尋が大量の値千金を求めるのは、きっとあの男のためだろう。そこまで考えるとふざける気も失せ、薬を作りながら「また例の諸さんのためか?」と尋ねた。 「あのばか、死にに行くつもりだよ。薬を持たせとかないと後始末するのはあたしだからね」 それを聞いた天不収は「あの人がばかなら、君もばかだ」と唇を尖らせて呟いた。 寒香尋が睨みつける。 「私もばかだ。昼寝にもってこいな時間に飛び起きて君の恋人が使う傷薬を作っているんだから!」と、天不収はぶつくさ言った。 寒香尋は顔を背けて黙り込んだ。館内にはただ、天不収が薬を搗く音だけが響いていた。