テキスト

ここしばらく暑気がきつくてな。雲華楼の階の前、池のほとりに一輪の新しい蓮が水面を割って咲き出してのう、これがなかなか趣き深い。風が吹けば首を揺らし、月を仰げばそっとうなだれ、日が昇れば葉の陰へ身を隠す。その姿を見ておると、いつの間にかお前のことを思い出してしまう。江湖は広い。今この時、お前がどこにいるのか、不知。あの煩わしい真昼の陽をしのぐ一片の葉は、そばにあるだろうか。 先日、庫の品を改めておったら、若い頃に集めてしまい込んでいた宝物が幾つか出てきた。ちょうど門に新たな妙物も加わったところでな。柔蘭がそれらをまとめて門派商店のほうに納めておいた。どうか暇の折にでも、覗きに来ておくれ。その中の一つ二つでもお前の力になれたなら、この想いも無駄にならずに済む。 蓮の実のごとく澄んだ心で、お前の早い帰りを待っておる。