テキスト

猫がまだちびっ子のとき、ある若者に出会った。顔はイケてるし、心もやさしいんだけど、ちょっとアホだった。ただ道ばたでゴロリとしてるだけなのに、大げさに慌てて...「ケガした? お腹すいた?」 その抱っこがふかふかで、猫は特に抵抗しなかった。でもなんと、名前をつけるのを忘れちゃった。やっぱりアホだ! あとで、若者は猫をある女の子のところへ連れて行った。その子はなんでも上手に世話してくれて、猫は大満足。家の子どもが毎日「とうふ、とうふ」って呼ぶようになったから、猫はそれからずっと「とうふ」になった。 でもそのうち、あの若者も来なくなり、女の子もいなくなった。猫のしっぽは火でやけどしてすごく痛かったけど、がまんしてひたすら走った。ずーっと走って、ふと見上げると...また元の場所に戻ってた。 猫には涙が出ない。家だとわかって、ただ小さな巣に戻って、ぐーすか寝たかった。 夢の中では、三人の飼い主がそろってた。猫は、まだちびっ子のまま。