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秦奮、二十一歳。両親の期待など眼中になく、胸に燃えるのはただ一つ、英雄になるという願いだ。 田舎のありふれた者ではなく、捕吏となって難事件を解決し、名を歴史に刻むことを夢見る。 だが彼にとって、最初の関門である「捕吏への道」こそ天に登るより難しかった。 文房四宝を商う半ば文人の両親は、独子に家業を継がせたいと願っていたが、秦奮は幼少より椅子に座っていられず、本を開けば線香一本焚えぬうちに意識は千里の外へ飛ぶ始末。 頭を梁に吊るし、腿に錐を刺すなど奇策を弄し、家を三度も移転させたが効果は皆無。本に触れれば即座に夢見心地となる有様だった。 ある夜、両親は灯火の下で熱心に書物を読む秦奮を発見し、窓外で抱き合い涙ぐむ。 「やはり名前が良かったか!秦奮、ついに学問の道に目覚めた!」 翌朝、秦奮は高らかに宣言した。「俺は捕吏になる!」 そこで初めて両親は知る。彼が読んでいたのは正統な経書ではなく、三流小説『不捕不快』であったことを。 その後起きた騒動は、秦奮自身も振り返りたくない過去だ。初めて自らの夢を見出し、同時にその夢までの絶望的な距離を知った日々。 激しい争いの末、秦奮は敗北し、両親のコネで縛られるように墨城へと送り込まれた。捕吏になるどころか、自ら「捕まえなきゃ気が済まない」状態に陥っていたのだ。 墨城の学堂で数ヶ月を過ごすが、長老たちの講釈など耳に入らない。脳裏を離れないのは、小説の主人公・李三刀が額に手を当て指を指し示すだけで、人混みから犯人を特定するあの洒脱な姿だった。 「ああ、一刻も早く捕吏にならねば!」 秦奮は情報を集め、ついに「解憂司」と書かれた鄙びた小屋を見つけ出す。 環境は劣悪だが、彼にとっては夢の聖地そのもの。 陶貴の反対をよそに居座りを決め込み、屋内に入れてもらえなければ庭で寝泊まりすること三ヶ月。 ついには陶貴と同じ制服を仕立て上げ、影のように付きまとった。 やがて山民たちも彼を解憂司の一員と認め、「秦捕吏!秦捕吏!」と呼ぶようになる。 「陳さんの鶏が見つからない、徐おばさんの卵を返さなきゃ、陶さんへ米を届けなきゃ…あ、木鳥も修理だ!」 この呼び声に魅入られたかのように、秦奮は目覚めるや否や働き回り、尽きることのない活力を見せる。 「おい、本当にここで英雄になれると思うか?」陶貴が目を細めて忠告する。 左手に卵籠、右手に粟米袋、頭に鶏の羽根を乗せた秦奮は、一瞬考えて力強く答えた。「もちろん!」