テキスト
世間ではよく「猫は貧乏、犬は富」と言われる。ある日、油紙傘屋に一匹の犬がふらりと現れ、それきり店先に居座ってどこへも行こうとしなかった。
店主の莊銘鳴は大喜びし、「これはきっと幸運の兆しにちがいない、傘屋の商売は必ずや繁盛し、自分も大金持ちになれるだろう」と胸を躍らせた。
ところが何年経っても、店の商いは相変わらずささやかなままで、結局裕福になることはなかった。
それでも、あの犬、来福がなぜあれほど店に居座り続けたのか、いまなら少しわかる気がする。きっと油紙傘の陰に身を潜めて、かくれんぼをするのが好きだったのだろう。
莊銘鳴もやがて悟った。忙しい日は傘作りに汗を流し、暇な日は来福とかくれんぼをして過ごせばいい。人生とは、静かに穏やかに幸せでいられることそのものが福なのだ。金持ちになることより、福を抱いて生きるほうがよほど大事なのだと。