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鷺は生涯、数多の「無謀な者」を見てきた。 いや、墨山道そのものが、天命を信じず己で道を拓く者たちを引き寄せるのかもしれぬ。 彼女も本質では同じだ。だが今、この嘆きの崖では、彼女は規則そのものとして振る舞わねばならない。 闇中で静かに回る歯車のごとく、墨山道の咽喉を守り、侵入者を拒み続けてきたのだ。 しかし、あの男を連れてきたのが馮師弟だったとは皮肉なものだ。 鷺は彼の言い分を信じてはいないが、人となりは評価している。 そもそも彼を山へ入れたのは彼女自身だ。 あの時、門を開ねば無鉄砲な文津館の弟子は山中の亡魂となっていたろう。 間抜けた師が関所を教えず、閑散とした門前で彼は樹皮をかじり野人のように彷徨っていた。 鷺がその半死半生の男を崖内へ連れ込むと、彼は厳然と並ぶ仕掛けに夢中になり、彼女を迷い込んだ同業者と勘違いして探索を始めた。 そして上への道を見つけ、「嬢さん、ついて来い!出口があるかも」と手を差し伸べた。 まさに彼女の思うつぼだ。 「よかろう、その弟子令に中身があるか確かめてやる」。 鷺が一瞬我を忘れた隙に、二人は難題を次々と解き、一人がもう一人を背負って確実に上へと進んだ。 「道がなくても、新しい道を作ればいい」。谷間に響くその声は、かつて馮師弟が仕掛けの尽きた場所で言った言葉と同じだ。 千度でも万度でもやり直す、運命を信じぬ者たち。 かつて山門を探し彷徨う客だった彼は、今や後続を導く立場にある。 鷺は連山の法を思い出す。鎖で山を繋げば千軍万馬を拒めるが、人の心が繋がれば万里をも制する。山は高く道は長けれど、その意志は万方に届くのだ。 彼女は門を開く者。朝日のごとく現れる、運命を認めぬ魂を静かに待ち、自らの手で在山への道へと導くのである。