テキスト

昔々、原初の菩提樹はまだ普通の木で、苦海彼岸もただの湿地だった頃。猫たちは経も聞き分けず、六猫神僧という名もなかった ある日、罪業塔の災いから逃げた老僧が、菩提樹の下に辿り着き、果ての見えぬ苦海を振り返り、行く先を思い悩んでいた。その時、「にゃあん」と小さな声。ふと見ると、木のうろには目も開いていない六匹の子猫。老僧は涙した 苦海はなおも広がっていたが、木の下には、ひとりの老僧と、六匹の尻尾長き小さな施主がいた