テキストあやめにはかつて飼い主がいた。百草平原の農家だった 農家はよく、彩背の複雑であたたかな毛並みを撫でながら言っていた 「北盟の英雄たちがいなけりゃ、俺たちもう生きちゃいないよなあ」 そう言って、戦死した将兵たちに香を手向けていた だが、後にあの城に強盗どもが現れると、農家は怖れて香も焚かなくなった そしてあやめも、置き去りにされた こうしてあやめは、飼い主をなくしたのだった