テキスト

七ちゃんがいちばん好きなのは、骨ではなくハッカチョウだ。 大好きな相手にはついペロペロ舐めてしまうから、ハッカチョウの羽はいつもしっとり濡れている。 ハッカチョウの飼い主は、銅の頭をした風変わりな男で、谷に響くカンカンという音楽も、どうやらその奇人が鳴らしているらしい。 七ちゃんはその男のことも好きだ。名前からしても、七ちゃんと八ちゃん、きっと同じ親から生まれた兄弟みたいに思えるから。 あの日、七ちゃんが夢中になってハッカチョウの「洗髪」をしていたとき、ちょうど銅頭の変人がやって来た。 ハッカチョウの半身はすでに七ちゃんの口の中に消えていて、八ちゃんはあまりの光景に度肝を抜かれ、頭が落ちそうになりながら、大声で叫んだ。「放せ!」 その声に驚いた七ちゃんがあわてて口を開けると、ハッカチョウはバサバサと飛び出し、七ちゃんの頭の上にぴたりととまった。 ハッカチョウは首をかしげ、変人そっくりの口調で澄んだ声を響かせる。「放せ!」 八ちゃんは一瞬ぽかんとしたあと、腹を抱えて大笑いした。 七ちゃんには、どうしてそんなに驚くのか分からない。ただ嬉しそうに尻尾を振り、谷に響くカンカンという音に耳を澄ませ、変人のズボンに身をすり寄せてから、頭の上の鳥を見上げる。ああ、なんて幸せだろう。大好きなものたちが、みんな自分のそばにいる。