テキスト
顕徳二年......月......日
妙善禅師が皇帝より仏子の称号を賜り、法華禅院の管理も任された。その禅院は慈心町のすぐそばにある。仏子がいれば、この町の仏像彫刻の生業はきっと廃仏の波から守られよう。
我らの信心も釈尊に届くはず。ただ静かに石を選び、仏を彫るのみ。
......
顕徳三年......月......日
息子の一先は、毎日怠けてばかりで精進しない。楊家に伝わる仏像彫刻の技も、このままでは継ぐ者がいなくなってしまう。とはいえ、最近は仏像を買い付けに来る商船もめっきり減ってきた。いっそ他の生業に替えるべきかもしれない......いや、よそう。子や孫には子や孫の運がある。任せるとしよう。
......
顕徳六年......月......日
ここ二年、収入は減り続け生活は苦しい。町にも不安が広がり、人々は仏子に訴えようとするが、廃仏の命は朝廷より下されたもの。仏子に何ができるというのか。
......
顕徳六年......月......日
仏子から手紙が届き、苦海彼岸にある罪業塔で石を割ってくれと頼まれた。そこで目にしたのは世にも稀なる美玉。中に仏の姿がうっすらと浮かび、まさに逸品だった。本来なら丁寧に磨いて鑑賞すべきものだが、仏子はそれを真っ二つに割れという。実に惜しい......非常に堅い玉だ。慎重に作業せねばなるまい。
......
顕徳六年......月......日
暮れの鼓が......どうして昼に鳴るのだ? しかも罪業塔の方向からだ。まさか......禅師に何か? 急いで様子を見に行かねば。
(記録はここで途切れている)