テキスト

万古一人殿に足を踏み入れたその瞬間、朱魚は神とは何かを知った。神となる者は、人の上へと這い上がるが、「河伯」たちはさらに貪欲に、人のまま天命へと挑もうとした。禹、李氷、王景……天を恐れぬ胆力を持ってこそ、人は万古に一人の「河伯」となる資格を得る。 この世の成敗は常に等しい。もし神話に語られる「四涜」の龍が本当にいるのなら、この地の龍王こそ……恐らくは天下で最も鬱屈した存在だろう。朱魚は残された一尾の「龍王」に丹丸を投じた。たとえ痛みを少しでも和らげられるなら、それでいい。やがて龍王は彼を主と認めた。後に語られる。契丹が北へ退く折、「河伯」が龍を従えて現れ、濁流を九天の水龍と化し、幾万の兵を呑んだという。 「そんなに大袈裟な話じゃないって。あなたの顔がちょっと怖かっただけ」朱魚は笑って龍王の頭を撫で、もう一本丹丸を投げた。龍王は不満げに鳴いて水飛沫をかけ、ひらりと水底へ潜り、主の気まぐれにもう付き合う気はなさそうだった。