テキストあの日、大平原で慌てふためく中年男と、麦畑に倒れた瀕死の老婦人を目にした。 男らは薬を求めなかった。男も彼も、老婦人が助からないと悟ったからだ。 男が紙と筆は無いか? と聞くので、カバンから布を引き裂いて渡す。老婦人は炭筆で布に、とある料理の調理方法を描いた。すでに意識は混濁した様子で「家に帰って息子に麺を教えないと」と繰り返しながら、落とした涙で炭の線を滲ませる。苦しそうに、辛そうに、彼女は旅立って行った。 彼にはわかっていた――それは槐葉の麺の調理法だった。