テキスト
河東八俊が散り散りになってから長い歳月を経て、古楽はようやく清河に戻ってきた。
百草平原を吹く風は変わらない。全てが昔のままに見えても変わったものはある。
例えば、今も生い茂るこの緑の草の下には、彼と肩を並べて戦った無数の屍が埋まっているのだ。
あの戦争に真の勝利者などいるのだろうか? 彼は深く考えまいと、旅立つ道を選んだ。「形あるものは変わらず、去ったのは人だけ」、そんな悲哀を感じたくなかったのかもしれない。
数多の道を歩き、無数の人々を見てきた。過去を振り返った彼は、旧友らに捧げる弔いの曲を忘れていたことに気付いた。
だから彼はここに戻ってきた。戦いで崩れた廃墟の間に佇み、懐古の調べを奏でる。
最後の戦いに参加できなかった自分へ。最後に一目会うことすら叶わなかった同志・烈言へ。
この曲は故人に贈る。この身は永く思い出とともに。
そして、招魂の鈴が清らかな音を響かせ、遥か彼方から呼応するように鳴り渡った。