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「忘仙郷」で江無浪はいつものように一人で酒を飲みながら月を眺めていた。彼が再び旅立つと聞いた君は慌てて駆け寄り、一緒に連れて行って欲しいと懇願した。江無浪は酒をぐいっと飲み「行けるなら自分で行け」とだけ言った。有頂天になった君はその日、人に出会うたびに自分が江湖に名を轟かす大侠客になると得意げに語った。どういうわけか、この話は寒香尋の耳に入ってしまった。
三日間、浮かれ気分で過ごし、いざ菓子と玩具を抱えて出発しようとすると、渡し場の前で寒香尋と江無浪に待ち伏せされていた。納得できずに「江おじさんは行っていいって言ったのに! 寒おばさんを呼ぶなんてずるい!」と抗議しても、江無浪は涼しい顔で「俺は『行けるなら』と言ったんだ。お前が簡単に寒香尋に捕まった時点で、行けないってことだ」と突き放し、君は反論する間もなく、寒香尋に連れ去られた。小舟のさざ波を背に、江無浪は遠ざかる二人の姿を静かに見送った。