テキスト
然ちゃんは良い子だった。劉ばあさんの話し相手になり、優しく膝をさする。契丹人が攻め込んだ時の落下傷だと聞けば、眉をひそめて契丹人の悪口を言い、自分の小さな布団を膝掛けとして差し出した。
然ちゃんは誰にでも挨拶し、その声はいつも明るく響いた。皆は彼女がペチャクチャと話すのを好んで聞いた。父から教わった物語を披露する様は、町中を回る小さな語り部のようだった。
「然ちゃんがいれば、江家茶屋で金を払って話を聞かなくても済む」と、魚屋の屋台で麺を啜る常連たちは口を揃えた。
然ちゃんは蓮花菓子が大好きだったが、父が買ってくる蓮花菓子を全て独り占めすることはない。
一番好きなお父さんに、お出掛けできない劉ばあさんに、肉屋でよく話す劉おじさんに、看板メニューを味見させてくれた孫おじさんに、お話仲間に、味方してくれる任小平のお母さんに…あ、任小平本人にはあげない!あの子とはいつも喧嘩なんだから」
配りたい人が多すぎて、蓮花菓子はいつも足りないから。然ちゃん自身に残す蓮花菓子はいつも少なかった。「三つ残すのは無理だから、二つ、いや一つにしよう」
物語の登場人物は皆そうしていた。故に話本の物語を聞いて育った然ちゃんは、まるで物語の主人公のように生きていた。世の中の誰もが物語を愛し、物語の中の世界に憧れている。全ての人が好きなように生きるべきで、それが物語のような人生なのだ。