テキスト
琢玉坊の月明かりは、昔と何も変わってない。だけど、今は石を削る音も、人もいない...手足の揃った人も、手を失った人も、誰もいない。ただ真っ黒なつまみがここで横たわってる。その目は拝火連玉よりもキラキラしてて、暗い夜の向こうを見てる。何かを待ってるのか、それとも何も待ってないのか。
誰も彼がここで何をしてるのか知らないし、誰も彼を知らない。かつて彼を知り、温めてくれた人は、欠けた石のように、器として使われる必要もなく、静かに時の川底に沈んでしまった。琢玉坊は空になり、職人は散り、炉の火は冷えた。だけどつまみはここにいる...つまみだけがここにいる。
少なくとも、一匹の猫が、川底のあの欠けた石を覚えてる。玉池の波紋は、彼と彼が共有した年輪だ。