テキスト

海無量が初めて胡辣湯を飲んだのは、十五年前のある雨の夜だった。ゴロゴロと耳元で鳴り響く音は、雷か雨か洪水かも分からず、契丹が城に入ったのかどうかも分からなかった。熱いものを最後に口にしたのがどれほど前のことかも、彼には覚えがない。ただはっきり覚えているのは、その夜みんながあり合わせの具を大鍋に放り込み、朱頭領が胡椒をひとつまみ入れたこと。そして最初の一杯を朱頭領に差し出すと、「うまい」と笑ってくれたことだった。