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世は利を求めて騒がしいが、陳全にとって名利はただの通り風に過ぎなかった。彼が求めたのはただ一つ、この世を心のままに生きることだけ。
梁の乾化二年の冬、大晦日の夜。風が吹き抜ける粗末な藁葺き小屋で、一人の赤子が誕生した。床に伏した母親は、泣き叫ぶ我が子を優しい眼差しで見つめていた。これからの運命など誰にもわからないが、せめてこの子には十全十美の人生をと願い「陳全」と名付けた。
幼い陳全が野原を駆け回っていた頃、世は乱れて飢饉が続き、決して豊かな暮らしではなかった。しかし両親のように、彼も苦しい中で楽しさを見出す術を知っていた。父はよく言ったものだ。「人生は短い。くよくよするな」と。陳全はこの言葉を胸に、花や草、この世の良きものも悪しきものも全て愛した。疫病で両親を同時に失った年も、父の教えを忘れることはなかった。生死は人の常、生き残った者は前を向いて生きねばならない。
成長した陳全は両親の教えを胸にあらゆる地に訪れ、多くの人と出会い、様々なものに心奪われた。中でも最も愛したのは酒だった。酔えば天地が夢幻となり、さらに面白かった。しかしこのような生き様を批判する者も少なくなかった。ある時酔った勢いで編み出した拳法が評判を呼び、いつの間にか「酔拳客」の異名が江湖に広まっていた。流派の長老が入門を勧めても彼は大笑いして手を振り、貴人が招いても、ふらりと立ち去った。江湖の人々は口々に言った。「いったい何がこの男を縛れるというのか」と。その答えは、陳全自身が示すことになる。
晋の開運四年、契丹が開封を攻めたことで鬼市は崩壊した。かつて鬼市の朱佑生に命を救われた恩に報いるため、陳全は鬼市と九流門に加わった。名利には縛られなかったが、恩義には心を動かされた。それでも彼の本質は変わらない。最も烈しい酒を飲み、自由奔放に江湖を駆け巡った。外の者たちは、陳全のような男が本当に鬼市と九流門のために命を賭けるのかと訝しんだ。しかし寒い冬に生まれ、熱い一生を駆け抜けた男はすでに満足していた。もし「その時」が来れば、酒などさっさと捨て、この上なく痛快な宴へと赴くだろう。