テキスト
これは負け戦。そして、今日が我らの命日だ。
猛進する敵の騎兵が巻き起こす砂嵐を眺め、足元に伝わる震動を感じながら、烈言は心の中でそう呟いた。
烈言は清河の浮浪児で、書物はあまり読んでこなかった。しかし、王将軍に感化され、初めて兵法書に心を引かれた。兵法書には「兵力が敵の十倍なら包囲せよ、五倍なら攻城せよ、一倍なら野戦せよ」と記されている。
しかし、敵の兵力がこちらの十倍、または五倍のときはどうすべきかについては、一切触れられていなかった。
長い時をかけ作戦を練り挑んだはずの戦いは、思い描いたものとは違っていたのである。
「将軍殿!」
「将軍殿!」
「将軍殿!」
将兵たちの目にも隠しきれぬ戸惑いが浮かんでいた。
「皆の者、この門を開けば、生きて帰ることはできぬ」と、烈言は将兵たちに語りかけた。
「しかし、この門を閉ざすならば、清河の民は敵の刀に屠られるだろう」
彼らに残された唯一の勝機は、敵軍を地下通路に誘い込んで爆薬に火を付け、敵を燕北盟の地下へ道連れにすることである。しかし、この戦法を成功させるのは決して容易なことではない。
烈言は将兵たちにすべてを打ち明け、その返事を待った。
「将軍殿についていくぞ。門を開けて戦おう!」
「国土の一片たりとも、命を賭けて守り抜く! 門を開けて戦うのだ!」
「戦う!」「戦うぞ!」「いくぞ!」
将兵たちの喊声が次第に大きくなり、その熱い志に心を打たれた烈言は、生まれて初めて涙を流した。彼は槍を握りしめ、将兵一人ひとりの顔をじっくりと見渡しながら、心の中でそれぞれに別れを告げた。
そして、彼は涙を拭い、敵軍の方を向いて槍を突き出した。
「門を開けろ!迎え撃つ!」
これが烈言の最期の言葉だった。