テキスト
夕焼けが空を染め、気づけば夜が訪れていた。
阿景と阿達は張じいさんを追い、路地を抜け雀神争覇の会場へ入った。会場は金銀や宝石がきらめき、眩しくて目を細めずにはいられなかった。
阿達の裾が貔貅の石像に触れると、半枚の銅銭ががしりと咥えられた。瓦の隙間から「からん」と硬貨の転がる音がして、張じいさんは横刀を取ると青煉瓦にガンッと打ちつけた。
「金…金を…吐き出せ!全部吐き出せ!」
ろれつの回らない声に、二人は思わず身震いした。阿景は袖を握りしめ、心の中で呟いた──
「このじいさん、今度は何をするつもりだ」
金銀を身につけた帳場の者が数人集まったが、じいさんは一顧だにせず、鋭い眼差しで言い放った。
「そこの二人、ぐずぐず言わずさっさと行け!」 二人は視線を交わし、腹を決めた。今度こそ何があろうと、この得体の知れぬ老人にこき使われるわけにはいかない。
阿景は汗で濡れた袖を握りしめ、身を乗り出した。「かつての弱かった俺たちはもういない!」
「今ここに立っているのは──」
言葉がまだ終わらぬうちに、近くにいた府尹が歩み寄ってきた。不審な三人を見て事情を尋ねると、二人が断ろうとしていた「ただ働き」はたちまち「命令」へ変わってしまった。
「はぁ…結局、弱いままの俺たちだな…」
阿達は、泣きそうな顔で小さく呟いた。
懐に無理やり押し込まれた赤い卵がやけに痛んだ。二人は仕方なく雀神争覇に参加し、知恵を絞って力を尽くした末に大量の闘銭を勝ち取った。
意気揚々とそれをじいさんに渡そうとすると、
張じいさんは手を振りながら言った。
「金を…配れ…家来を呼べ…配るんだ…」
「家来?どこにそんな者がいるんだ?」
二人は顔を見合わせると、張じいさんは満足げに頷き、そのまま背を向けて去っていった。
結局二人は夜風の中、立ち尽くすしかなかった。