テキスト
この世に、決して変わらず、決して砕けず、思い出したときにはいつでも会えるものがあるだろうか?
聡い者なら、江や海だと言うだろう。水の粒は決して砕けず、ただ江海へと溶け入るだけだからだ。
賢明な者なら、月の光を思い浮かべるかもしれない。川の水は年ごとに流れ去っていくが、月光だけは変わらず人の世を照らし続けるからだ。
「ぼく、知ってるよ。答えは米菓子だ!」
小米は、はっきりとそう答えた。
子供の世界には、うねる大河も月の光もない。あるのは永遠のおやつだけだ。米菓子は減ったりしない。食べたくなったら、いつだってそこにある。もし、いつも持ち歩いている小さな袋がしぼんでしまったら、母ちゃんに言えばいい。ほどなくして、袋の中はまた香ばしい米菓子でいっぱいになるのだ。
「ばかね!米菓子なんて一番壊れやすいんだから!あれはみんな、あんたの母ちゃんがこっそり袋に詰めてくれてるだけよ!」
本当に?小米は口をとがらせ、今にも声を上げて泣き出しそうになる。大人たちこそ、ほんとのばかだ。何もわかっていない。母ちゃんの抱っこ、母ちゃんの子守歌、甘い甘い米菓子...この世には、変わらず砕けもしないものが、本当は山ほどある。わざわざ月の上や江や海の中まで探しに行く必要なんて、どこにもないのだ。
「ぼくのほうが正しいもん、ぼくが正しいんだもん...」小米は大事にしている小さな袋を開け、また一握りの米菓子を取り出して口いっぱいにほおばった。
それから、ずっとずっと長い時が流れ、小米は長安へとやって来た。あの小さな袋は失くしてしまい、昔の服ももう着られなくなっていた。背は伸び、体つきも逞しくなり、やがてある日、真っ白なひげまで生えてきた。
「この世に、決して変わらず、決して砕けず、思い出したときにはいつでも会えるものがあるだろうか?」
米嘉栄が、小さな頭を上げて彼にたずねる。宮中から下賜された金銀だろうか。石碑に刻まれた名だろうか。年ごとにその目からあふれ出る大河や、毎夜彼の寝台のそばを照らす月光なのだろうか。
彼はもう大人になり、とても聡く、またとても賢明になっていた。胸の内には、聡くて賢明な答えがあった。
「米菓子だよ」小米は子供にそう言った。
「母ちゃんが袋に詰めてくれた米菓子なんだよ」