テキスト
泰山の頂には、水陸十八派の名手がすべて集っていたが、その表情に晴れやかな色はなく、重苦しい空気が立ちこめていた。というのも、この一年で武林は二つの驚天動地の惨事に見舞われていたからである。
一つは年初、武林盟主の宇文岳の一族が、屋敷の護衛百余名とともに、一夜にして皆殺しにされた事件。
もう一つは、つい先日のこと。天河で高家の当主の高群が、突如現れた白髪魔頭に一掌で心臓を貫かれ、その場で命を落とした。その白髪の男は正気を失ったかのように狂態をさらしながらも、身にまとう武力は実に妖異であった。高家に残る名手たちが総力で包囲してもなお抑えきれず、男は雄渾な掌力で包囲を破り、行方をくらましたという。
二つの惨劇はいずれも江湖の名士が命を落とした大事件である。もしこの二件が同一人物の手によるものだとすれば、その白髪の怪人は、まさしく魔頭と呼ぶにふさわしい存在であった。
陸縁は、各地を放浪する墨家の門弟である。集った名手たちの中に立ち、道中ずっと背負ってきた大きな仕掛け匣を、軽く叩いた。
「ねえ...その魔頭っていうのは、君じゃないだろうね?」
匣の中にいるのは、少し前に陸縁が救った、昏睡状態の白髪の病人だった。白髪があまりに目立つため、やむを得ず匣に隠していたのである。
匣の中は、しばらく沈黙していた。だが名手たちの議論が続くうち、細く絞った声が、陸縁の耳元に直接届いた。
「...先に立ち去れ。俺には、殺さねばならぬ者がいる」
陸縁は愕然とした。自分は本当に、あの魔頭を救ってしまったのか。制止しようとしたその瞬間、白髪の男は匣を破って飛び出し、次の刹那、人群の中の一人に躍りかかると、ただ一掌でその命を絶った。
「墨家の若輩と行動を共にしている以上、裏があるに違いない!まずはあの娘を捕らえて問い質せ!」
すでに包囲を突破していた白髪魔頭は、この声を聞くや否や、なんと再び殺陣の中へ引き返した。彼は陸縁の前に立ちはだかり、全身に傷を負いながらも彼女を庇い、再び血路を切り開いて脱出する。
その夜、二人は人里離れた荒れ寺に身を潜めた。怒りを抑えきれない陸縁は、なぜ無辜の者まで殺すのかと、白髪魔頭を叱りつけた。だが、昼間あれほど無敵を誇った魔頭は、その言葉を聞くと、ただ黙して涙を流すばかりだった。その身に刻まれた無数の傷が、すべて自分を守るためのものだと気づき、陸縁は胸を痛め、事情を尋ねる。
「...話したところで、信じてくれるのか?」
白髪魔頭は、異様な姿となった己を、陸縁が信じるはずはないと感じていた。
だが、もとより純真で情に厚い陸縁は「まずは話してみて」と、それだけを告げた。
「俺は、武林盟主の宇文岳の子、宇文天音だ。母の誕生日の日、暴徒どもが重金で宴を取り仕切る者を買収し、酒に毒を盛った。目を覚ました時、父は俺を庇い、目の前で命を落とした。俺は炎の中を駆け抜け、辛うじて包囲を脱したが、その際に火瘴の毒を吸い込み、髪も髭も白く変じた。天河の高家は救援と見せかけ、我が家の財を奪い、昏睡状態の俺を地下牢に囚えて昼夜を問わず責め苦を与え、家伝の排雲掌の秘訣を吐かせようとした。火瘴の毒は俺の姿を変えたが、同時に経脈を拓き、功力は次第に戻った。やがて枷を断ち切り、高家の当主を討って脱出したのだ。傷がもとで倒れたところを、お前に救われた」
陸縁は彼の顔立ちに正気と誠実さを感じ、語り口にも偽りはなく、筋も通っていると判断し、すでに半ばは信じていた。さらに、昼間、命を賭して自分を守ったその行いが決定打となり、疑念は完全に消えた。彼女は静かに考えを巡らせ、こう告げる。
「盟主が急逝し、座が空いたその時...最も盟主の座に近かった者こそが、君の仇である可能性が高いわ」
さて、武林盟主を決する武芸の試合は、半月に及ぶ激闘の末、ついに五名のみがその高位を争う資格を残すに至った。
まさに決戦が始まろうとしたその時、白髪魔頭が忽然と姿を現す。場内の者は皆、顔色を失い、その威名を恐れて、誰一人として正面から相対しようとはしなかった。しかし台上の五人は、このまま退くわけにはいかず、名門の誇りを賭けて次々と打って出る。だが、五対一であっても、白髪魔頭には及ばない。
「何たる掌力...!」
刹那、五人のうち一人が、宇文天音の排雲掌の一瞬の隙を見抜き、剣を放って命門を貫いた。
...かのように見えた。だが倒れていたのは人ではなく、精巧なからくり人形であった。その刹那、暗がりより宇文天音が躍り出て、掌を打ち放つ。炸裂する排雲掌により、先ほど剣を放った男は即座に命を落とした。
真相を知らぬ江湖の者たちは、雪崩を打って押し寄せる。残る四名の名手は、それが宇文家の絶学の排雲掌であると、ついに悟った。陸縁が必死に叫び、弁明するも、その声は届かない。
「宇文家が滅びねば、我ら名門は永劫に日の目を見ぬ!」
その言葉に、宇文天音は雷に打たれたように悟る。一族を滅ぼしたのは、決して一人の悪徒ではない。盟主の座を狙う名門が、ある者は黙認し、ある者は手を下し、結託して宇文家を抹殺したのだ。その日、宇文天音は真の意味で魔頭と化した。一人にして殺神となり、数え切れぬ名手を斬り伏せ、陸縁を連れて血路を開き、包囲を脱する。
それ以後、江湖には陸縁の消息だけが残り、宇文天音の姿を見る者はいなかった。だが、誰一人として陸縁に手を出そうとする者もいない。天下最凶の魔頭は、彼女が常に携えるあの仕掛け箱の中に潜んでいると、人々はそう囁いた。翌年の盟主大会に、陸縁は姿を現す。対戦予定の者は前日に降伏するか、あるいは姿を消し、彼女は一戦も交えることなく武林の主の座に就いた。盟主となった陸縁は、白髪魔頭と呼ばれた男の冤を雪ぎ、翌年にはその座を辞し、江湖を去る。その後、陸縁と宇文天音の行方を知る者は、誰一人としていない。