テキスト
私はあの将軍とひとつ取り引きをした。私が食糧を用意し、その代わりに将軍が井戸を掘ってくれるというものだった。
長い旅路を行く渡り鳥であっても、どこかでひととき羽を休める場所を選ぶものだ。
スリ隊商が休み場に選ぶのも、たいていはそのような井戸のある土地だ。
だが今度ばかりは、どうにも長く留まりすぎているようだった。井戸を掘る工事というものが、想像以上に長くかかるせいかもしれない。
最初、唐軍は城の守りも兼ねる兵を少しばかり寄越しただけで、工事の進みは決して早くはなかった。
当初自分で見積もっていたとおり、この取り引きはあまり割の良いものではなかったのだ。
ところが、いつからともなく村人たちが大勢集まり、唐軍と一緒に井戸掘りを手伝い始めた。金のためでもなく、利のためでもない。
理由をうまく説明できる者は誰もおらず、ただ「中原に戻ってみたい」「長安に戻ってみたい」と口々に言うだけだった。
長安、かつて私もこの都に強い憧れを抱いていた。父祖から教わった商いの道によれば、
それは大商人に成り上がり、しかるべき証を授かり祈りを捧げて、ようやく足を踏み入れられる土地なのだという。
だが、多くは長安に行ったことすらない兵や村人たちが、そこへ向かおうとする理由とは何なのだろう。
私は城楼の上のあの将軍に尋ねた。彼は、長安は自分たちの国の中心であり、心の中の故郷でもあるのだと言った。
私は「故郷」という言葉の意味を理解できなかった。将軍は、心残りがある場所こそが故郷であり、旅人が歩みを止められる場所こそが故郷なのだと教えてくれた。
それでも私は腑に落ちなかったので、将軍に問うた。「もし自分の目で一度長安へ行ってみれば、故郷とは何かが分かるのだろうか」と。
将軍は首を横に振った。
「分かるだろう。だがお前は行くべきではない。少なくとも今ではない」と。
「分かるのなら、行くべきだ」。そう言って私は笑い、新たな取り引きを持ちかけた。「お前たちは前から、疑われずに長安へ潜り込み、密かに情報を届けられる胡人を探していたはずだろう。私が代わりに行こう」。
私は身を乗り出して馬鞭を奪い取り、将軍の白馬に跨がると、三つの関所を越え、万里の道を駆け抜けた。そうして道すがら走り続け、ついに伝説に聞く長安へとたどり着いた。
長安は見事な都だった。だが、なぜだか私は、あの兵や村人たちと共に過ごした市をひどく恋しく思っていた。
戻ってきたとき、かつて寝泊まりしていた仮小屋の中に、点々と灯りがともっているのが見えた。
門番の召使いが笑顔で私に声をかけてきた。
「将軍が言ってましたぜ。康商主がいつ戻るか分からねえから、灯りをひとつ残しておけってな」。
そのとき初めて私は、故郷とはこういうものなのだと悟った。
ふいに、ここをもっと大きく、もっと良い土地にしたいと思った。胡楊の木を根づかせ、無数の黄金色の枝を伸ばさせたいと願った。
私は、自分の「故郷」を、スリの民にとっての故郷にしたいのだと思った。