テキスト
隣家の段嬢は、ここで養生を始めてもう久しいというのに、いっこうに快方へ向かわぬそうだ。
わしはここへ移り住んで日が浅く、彼女の脈を診たのは、指で数えるほどしかない。だが...彼女の患う病は、まことに稀有なものだ! わしの目からすれば、暑さ寒さの邪気を受けたものではなく、おそらく「魂離れの病」を得たのであろう!
見るに、その気色は常に落ち着きなく、意識は朦朧とし、三焦の気は四散しておる...脈を診た折には、彼女はこう打ち明けた。しばしば夜通し眠れず...己が身がふたつに割れ、魂が身を離れて飛び去るように感じるのだと...
ああ、心は遠く旅立つことを願いながら、病の床に縛られるばかりとは、なんとも哀れなことだ。
明日は医道の根本に帰り、合魂丹を以て基を固め、独活湯を添えて鬱滞を祓うとしよう。