テキスト
涇水と渭水が合流するこの地には、広々とした湖が広がっている。かつてここに砦があり、春になると桃の花が咲き乱れ、岸一面が桃色に染まるその景色は「桃林砦」と呼ばれていた。西に秦川、東に長安を望む要衝で、秦川から長安へ向かう者はここで必ず通行証を示し、身分や荷物の検査を受けてから東へ進んだ。
やがて国を奪って宝を求めた者が湖を閉ざし、砦は崩れて多くの命が失われた。
今はただ清らかな風がそよぎ、青空と湖面が一体となり静かに広がっている。
かつての華やかな桃林も、名を轟かせた英雄たちも、いまはもうない。
人の一生は儚く、天地は遥かだ。
湖辺にひとり佇む私は、いったい誰と語り合えばよいのだろう。