テキスト
いやはや、山河を訪ね歩いてきたが、この夢のような光景は見たことがない。ここは、仙境にも勝る光景だ。咲き乱れる梨の花が舞い散り、花びらは水面を流れてゆく。川辺の客は杯を流し琴と酒を楽しみ、酒の香りが野に満ちている。日暮れには鉄火の芸があり、熱く溶けた鉄が空に散る様は星が降るごとし。見物人が集い賑わうここの地理や慣習は、忘仙郷に似ているが少し異なる。忘仙郷が戦火に消え、離人涙を味わえぬことを嘆いていたが、この夢の世界を見て、思わず詩仙の句を詠んだ。「桃の花びらが流れ去るように、この世とは異なる別天地がある」