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昔、玄宗皇帝が葉尊師を召すことありき。上元節の夜、月満ち灯ともる時なり。帝は都の賑わひを誇り、葉法善は「今宵も見るに値す」と答え、妙なる術を以て皇帝を連れ宮を出づ。
風をまずして雲を駆り関隴を越え、たちまち都を離れ、目の前に黄河・湟水の景色広がりたり。
行き着く処は雑多にして華やかな見物の場。千もの灯ともり、香煙十里に満ち、澄んだ夜は春の如く明らかなり。
そこは仙境の如く、輝く仏像は月影を覆い、舞楽盛んにして絢爛の衣を纏ふ民、辺りを満たす。
夜更け星巡るも帝の興は尽きず巡覧続く。上下の身分交わり、貴賎ともに溶け合ふ趣、計り知れず。
やがて郷愁胸を満たし、帝もいつしか都に還る。
穆王や漢武の伝説に似たりとも、これは道士の術による奇事なり。
風に灯は消え、雲は仙客を迎ふ。
廃れし辺境に塵煙立ち、秦陵の柏かすむ。
──唐の徳を慕ふ遺民の心を虚しくし、今宵ほど哀しき夜はなし。