テキスト

一、臨安名菜:蟹醸橙 食材の選定:十月に子を抱えた雌蟹、太湖蟹が最上。黄熟した枝付きの大橙。 調理法:大きな橙の頂を切り取り、中身をくり抜いて少量の果汁を残す。蟹の味噌と身を詰め、枝付きの蓋を被せ直し、小蒸籠に入れ、酒・酢水で蒸し上げる。苦酢のようであれば塩を加えて供す。香り高く鮮やかな味わい。 心得:橙の香りが生臭さを解し、蟹肉は凝脂の如く、塩味の中に橙の爽やかな酸味と甘みが残る。ただ量が少なすぎて、半口で無くなり、食べ足りない! 二、開封冬の味:羊の煮込み 食材の選定:仔羊のあばら肉または腿肉。皮を剥いてすり潰した沙苑杏仁。 調理法:羊肉を切り分け、砂鍋に入れ、葱・山椒の他に秘法あり。搗き潰した杏仁数粒のみを加え、強火で煮込めば骨まで崩れるほど柔らかくなる。 心得:肉は柔らかくも崩れず、汁は乳の如く白く、パクチーが仕上げに脂を解す。冬に食せば体の芯から温まる。旨い!ただし夏は食べ過ぎぬよう、胸焼けしやすい。 三、文人の雅な点心:梅の花湯餅 食材の選定:建陽の冬梅、三篩の小麦粉、年越しの火腿 調理法:まず白梅と檀香の粉末に浸し、水で小麦粉を練りワンタンの皮を作る。一枚ずつ重ね、梅花型の五弁の鉄型で打ち抜き、茹で上げる。 心得:麺片は薄絹のように透き通り、梅花のほのかな香りが歯間に漂い、鶏スープは清らかで花の風韻を損なわない。ただ味がやや淡く、少し物足りない。 四、冬のしゃぶ鍋:霞鍋 食材の選定:兎の背肉、姜柑醤 調理法:兎肉を凍らせて薄く削ぎ、沸かした骨スープの中でさっとほぐせば即座に火が通る。醤をつけて食す。 心得:兎肉は紙のように薄く、滾るスープにさっとくぐらせれば霞色に染まり、橘醤をつければ酸味と香りが爽やかで歯切れよい。良い酒と合わせれば、その味わいは更に一スタック上へ! 五、冷菜の絶技:水晶なます 食材の選定:鮮鱸魚、香糟 調理法:魚の切り身を沸騰した湯でさっと湯引きし、香糟・生姜汁と共に陶鉢に入れ、雪窖に埋めて凝固させ、切り分けて氷蓮根に盛り付ける。 心得:魚の煮凝りは琥珀の如く透き通り、口に入れれば即座に溶け、糟の香りが骨まで染み渡り、歯触りの良い蓮根が脂を解す。熱々のご飯を一お碗添えれば、天帝が来ようとも、この箸は絶対に放さぬ! 六、開封の朝市:炙り豚皮肉 食材の選定:豚の首皮、粗塩 調理法:豚皮を鉄串に刺し、炭火の上で素早く回転させ、脂が滴る時に椒塩を振り、皮が蟾酥の如く泡立てば焼き上がり。切り分けて胡餅に載せる。 心得:豚皮は琥珀の如くカリカリに焼け、肉と脂が交じり合い、椒塩の辛味が炭焼きの香ばしさを引き出し、数本先の路地からでも匂いが届く。ただしこの料理は料理人の火加減の腕が極めて問われ、さもなくば口にするのはパサパサの一口だけ。 七、臨安の夏の点心:砂糖団子氷菓子 食材の選定:糯米粉、石蜜、梅の漬け汁 調理法:糯米粉を丸めて沸騰した湯で浮き上がるまで茹で、氷井戸で冷やし通し、砂糖蜜と梅の漬け汁をかけ、彫梅を添えて「氷盞三友」とする。 心得:糯米の丸子は氷の砂を纏い歯に沁み入り、蔗糖蜜は清らかな甘さでくどくなく、砕いた氷の粒と柔らかな餅が口中でぶつかり合う。夏の午後の一服に最適! 八、酒屋の夜食:糟羊蹄串 食材の選定:羊の蹄髈、香糟、山芥 調理法:羊蹄をじっくり煮て骨を外し、布で包んで四角く押し固め、糟の漬け汁に三日漬け込み、薄切りにして黄芥子を添える。 心得:羊蹄の筋のゼラチン質が煮凝りとなり、糟の香りが骨まで染み、芥子の辛みが仕上げに脂を解す。冬の夜、燭を灯して読書する時の必携の佳肴! ……