テキスト
今月五日、父は長男からの手紙を受け取り、末の弟に読み聞かせた。末の弟は少し字を知っているゆえ、口で述べ、それを先生に筆で書いてもらい、お前に伝えるという。
送お前の送ってきた修造の冊子は、村はずれの王大工に渡した。王大工はそれを見てたいそう喜んでおった。家では大きな変わりもなく、皆つつがなく過ごしている。ただそれだけを伝える。案ずるな。
(裏面の歪んだ小さな字
末弟より
末弟より。兄さん、母さんが一月ほど前、畑で草を刈っていて、ふと顔を上げた時に日差しが強く、そのまま坂を滑り落ちた。いま母さんは目が見えず、兄さんのことばかり口にしている。年の瀬も近い。兄さんは帰ってくるのか?)