テキスト
今日は穀物をひっくり返さずに済むほどの穏やかな日和。
方白が箒を振れば、ひよこたちが舞う麦殻をついばみながらついてくる。
隣人が垣根越しに「身寄りがないのは寂しい」と嘆けば、方白はひよこを指して笑う。
「この騒がしい家族たちで手一杯だ。余計な一人が増えれば、この静けさまでも失われよう」。
そう言い残し、鍬を担いで畑へ急ぐ。
畑の落ち穂は人目には隠れても雀には分かる。方白は耕しながら雀を追い、飛び立った後に泥まみれの粒を拾い、懐に収めた。
余閑の園の灯り柿はまた売れ切れだ。「もう慣れた」と呟き、逃した柿の代わりに夕焼けの空だけを眺める。
ふと歩けば熟した柿が頭に落ち、髪にべっとり絡む。
誰かに話したくても、そこには一本の柿の木があるのみ。
孤独な道すがら、彼は自作の怪異譚の結末を思う。獅子と信じていた犬「阿黄」が、犬の務めを果たさず天雷に打たれる話だ。しかし最期は群鳥が露をくわえ、羽でその身を覆った。家禽に囲まれた温かな最期。これも悪くない。
帰宅した方白が石の机に目をやると、墨の跡にはひよこたちが啄んだ麦糠が残っていた。彼は一粒つまみ上げ、ふと感ずるものがあり、再び筆を執った。書き足したのは、阿黄の残魂が尽きぬ際、群れなす鳥たちが露をくわえ、羽を広げてその身を覆い、まるで往生の法事を行ったという結末だ。やがて霊獣の金身は消え、軽煙となって朝霧に溶けた。
家禽に囲まれた、平静で温かな最期。これもまた、悪くはないだろう。
そこへ遠くから若者たちの騒ぐ声が聞こえてきた。近づいて見れば、彼らは衣を乱し、輿図を握りしめ、茫然とした表情を浮かべている。白い服は泥や埃で汚れ、見るも無残な有様だ。
方白が冗談を言おうとした刹那、五人の呆然とした視線とぶつかった。要領を得ない若者たちは方白を見つけると、一斉に目を輝かせ、我れ先にと駆け寄るが、つまずいて転がり合った。
「師叔!方師叔!あなたが方師叔ですね!」
方白はその装束を見て既に察していたが、わざと嫌そうに顔をしかめる。「我が筆頭弟子め、どうしてこんな間抜けな弟弟子ばかり集めるのだ」。
すると若者は泣き出した。その涙はどこか不安を孕んでいた。橙の空を染めるのは、血のような夕日。
「師叔...私ども文津館は...もう...ありません...」。風が吹き始めた。空は、ますます冷えていく。